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北海道の鉄道とか写真の話題など、、、日々の徒然を独り言のように細々と発信してみるブログ。小説作品執筆中。
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昨日まで五夜連続で放映された橋田壽賀子脚本ドラマ「99年の愛~JAPANESE AMERICANS」を視ました。


主演~草彅剛、仲間由紀恵。戦前の貧しい時代に日本からアメリカ本土に渡った日系移民一世から二世の戦中~戦後~現代までを描いた大河ドラマでした。


貧しい農家の次男坊が自立の夢を抱いてアメリカに渡り、裸一貫の季節労働者から白人社会の差別と闘いながらも農場主にまでなる物語から始まります。


その第一部の主人公、草彅演じる長吉とお見合い結婚したともを演じるイモトの演技が絶妙でした。


第二部以降ではそれぞれ父親、母親になった長吉、ともが中井貴一、泉ピン子にバトンタッチ。成長した長男一郎が草彅剛、次男が松山ケンイチ、しずとさちの姉妹による家族の物語が中心となります。

外交官の娘で留学生の仲間由紀恵演じるしのぶが大学内で白人男性から襲われそうになっているところを、一郎が身代わりになって助けだしたところから関係が始まり、やがて恋に落ちます。


恋が成就するかと思った矢先、反日感情の高まりから身の危険を感じた日系人が日本へ帰国することになり、しず、さちの姉妹も父長吉の判断で帰国することになります。ここから平松家の断裂と長い苦難の道程が始まります。


この時一緒に帰国することになっていたしのぶは、あろうことか帰国船から海に飛び込み自力で海岸まで泳ぎ着きます。

そんな馬鹿なぁーと突っ込みたくなりましたが、不思議と仲間由紀恵なら出来ちゃうんじゃないか?と思えてしまいます。仲間由紀恵からはそういったオーラを感じてしまいます、それこそが女優の持つオーラなのかもしれませんね。


余談ですが、これに匹敵する事例としては「北の国から」で田中邦衛演じる黒板五郎さんが猛吹雪の中、徒歩で富良野市街から六郷まで辿り着いたシーンです。土地勘のある人なら絶対に無理、十中八九遭難するか行き倒れになるかだろうと思うはずです。こういった極めて無茶な状況を演出してストーリーにメリハリを付けることもテレビにおける”お約束”の一つですね。



話がそれたのでドラマ本編の話題に戻ります。



1941年12月7日、日本軍の真珠湾攻撃による日米開戦から平松一家の運命が本当に暗転してしまいます。一家の大黒柱の長吉がFBIに検挙され、それまで順調に経営していた農場や財産一切を没収された上で一家全員が強制収容所に収容されます。

以後、長男一郎の日系人部隊への志願と出征、戦死。離れ離れになっていたしず、さち姉妹の沖縄戦並びに広島の原爆投下の悲劇。終戦と敗北の衝撃、失意の中での父長吉の自害。あの時代に起きた実際の悲劇が一つの家族を通して余すこと無く語られています。くわしくは番組オフィシャルHPのあらすじを参照してみてください。


そういった悲劇的な場面ばかりでなく、収容所の困難な状況にもめげず少しでも前向きに生きようとする日系人たちの姿が力強く描かれ、残された妻しのぶが一郎の子を産み、次郎が戦後から現代に渡って陰ながら支え続ける姿など、いついかなる時でも誠実かつ前向きに生きることの大切さを伝えるメッセージが溢れています。

物語は戦後、生き延びた人々が亡くなっていった人々の遺した礎をもとにして再び成功と幸せを勝ち取り、未来の世代へ受け継がれていくシーンで終わるハッピーエンドです。


ドラマはフィクションということもあって、ほとんどの登場人物が誠実さと聡明さを兼ね備えた人たちで、そういった人々が織り成す云わば理想の物語です。でもそれゆえに、かえって史実の悲劇性があぶり出され、かつ秀逸なストーリー構成のおかげで、戦争を遠い過去の出来事と思いがちなぼくたち若い世代にも分り易くリアルに伝わってきます。

想像を超えた苦難の中でも希望と誠実さを失わず貫き通した生き様に素直に感動しつつも、当時実際に生きた人々の歴史を単に美化するだけではすまない現実があることに対して複雑な思いを感じずにはいられません。


ここで一つ付け加えておきたいことは、一見すると絵に書いたような誠実な人たちが当時実際にいたのかという疑問について、そういった人たちは間違いなく存在しましたし、それも普通に想像される以上に沢山いただろうということです。そういった事例は、数々のドラマや小説、ドキュメントなどの著作、または当時を生きた多くの人々の記憶の中にたくさん埋もれています。人間が持つ本当の誠実さや輝きはそれとは真逆の困難で理不尽な状況の中でこそ発揮されうるものなのかもしれません。


今回のドラマは、そういった当時を生きた無数の名もなき人たちの姿を、ある一つの家族の生き様を通して象徴的に描いたものだと思います。脚本を書いた橋田壽賀子さんご本人がこれは私からの遺言だと語っています。それだけこのドラマには、今を生きるぼくたちの世代が知っておかなければならないメッセージが込められているのだと思います。それらは、これからの困難な時代を乗り切る上で必要不可欠なことかもしれません。



まだ見ていない方は、再放送があった折には見ておいて損はしないドラマだと思います。




                           ★




このドラマを見ていて、いくつか心につっかかりを感じたり違和感を覚えたシーンがありました。

それは現代の回想場面で曾孫世代に当たる子供たちが、当時の人々が困難な状況を乗り越えてきたおかげで今の自分達があることの意味について雄弁に語るシーンと、強制収容所において日系人たちが殺伐とした環境を少しづつ住み良い環境に変えて、やがて不毛の大地を実り豊かな畑地にまで育てるシーンです。


リアリティ云々が言いたいのではなく、そのメッセージの意味するところについて思うところがいくつかあります。

先に書いたとおり、物語では日米で生き延びた主要人物が現在では立派な資産家になって子孫も繁栄しているというハッピーエンドです。そして、先祖の苦難の道程を一族の若者や子供たちが語り継ぎ平和と豊かさの意義を噛み締めるといった終わり方です。

ドラマはこれで終わっていいのかもしれませんが、現実社会の日米の現状を鑑みてしまうと、とても平和と豊かさの意義を再確認するだけでは済まないような事態に陥っています。

ぼくたち若い世代がどんなに知識や情報として当時のことを知ったとしても、実際に体験してきた人々の思いや実感を完璧に理解することはできないのと同じように、今の豊かで平和な時代に対する実感についても、実際に体験した世代とそうでない世代の間で相当な隔たりがあるように思えます。


もっとはっきり言ってしまうと、戦争の時代を乗り越えて遮二無二に働いて今の平和な世を築いた世代の方々から、この時代を若い世代が引き継いで未来永劫に渡って守り続けて欲しいという思いが伝わる一方で、豊かさを享受することが当たり前になった世代が中心となった現在の社会は、その豊かさと平和を自ら喰い潰して崩壊に向かおうとしてしまっている悲しい現実があります。


あの言語に尽くしがたいほどの悲惨な戦争から今の平和で豊かな社会を打ち立てた原動力になったものは、苦難の体験に裏付けられた平和への理想にあったのではないかと思います。その理想は苦難の裏付けがあったからこそ”確かな理想”でありえたわけですし、現代の平和で豊かな社会を”理想の社会”として位置づけることも可能にしているのだと思います。


ところがその理想を受け継いだはずの、ちょうどボクらの親にあたる世代では、そういった実体験の裏付けのない理想がいつの間にか”絵に描いた理想”のようになり、その恩恵であるはずの豊かさを半ば無条件で享受できるようになりました。時代が進むにつれて経済はますます発展してより豊かな生活が出来るようになると、豊かさそのものを可能な限り享受できることが”新しい理想”となっていきました。そして、ぼくたち若者世代の多くは、そんな世の中を当たり前のこととして、何ら気に止めることの無いような価値観の中で育って現在に至ります。


ぼくはこれまでに戦争の時代に限らず、過去の時代の困難な状況に負けず直向きに生きた人々の物語に惹かれ、今回のようなドラマや映画を見たり、いくつかの小説や実録記を読んだりしてきました。それは、自分自身の人生を省みたときに、そういった心揺さぶられるような人生経験が殆ど無い上、それゆえに自分が内面的に乏しい痩せ細った人間であることに気が付いていたからだと思います。


そういった過去のストーリーを通して、ぼくは人生の本当の豊かさや人間が本来持つ誠実さ、気高さ、心の純粋さを知ることが出来ました。そして、それらは”絵に描いた理想”などではなく実在する人間の本質であることを確信しています。

しかし、はたしてそれらを自分自身の内面の中に見出すことが出来るのかと問われれば、答えは残念ながら否となってしまいます。どんなに過去の名作や実話の中の生き様に感銘を受けて、たとえその意味を知ることで全く知らないでいるよりは遥かに心が豊かになったとしても、それを真に自分のものとするために必要な体験と実感だけは得られません。

本や映像で得られる実感は借り物の知識に過ぎません。それだけをもってして真の人生を求めたとしても、それはちょうどドラマの現代編で人生の意味について雄弁に語る子供たちの違和感あるシーンにも重なるものだと思います。

つまり、実際に苦難を体験し乗り越えて得た境地を語り聞かせることだけで若い世代に受け継がせていくことは、ほとんど不可能に近いということです。もし、それが上手くいっていれば今この時代はこんなにまで酷い状況に陥いることはなかったでしょう。


そして、実際にあったアメリカから日系人に向けられた理不尽な仕打ちである強制収容所送りと、そこでの絶望と希望が交錯する先の見えない日々の生活の様子が、これからの日本がたどる苦難の道程の暗示であるメッセージに思えてなりません。



                           ★



昨今の世界情勢はいよいよ先行きが見えなくなってきていますが、だからといってそれがすぐにあの当時のような悲惨な戦争へと突き進むことは考えにくいことです。しかし、歴史の因果を少し丁寧に紐解いてみると、あれだけの空前絶後の戦争を引き起こした誘因となる当時の経済情勢が、昨今のそれと似たような状態であったことは事実です。

世界全体の経済を一つとして見た場合、その運営状態が思わしくなくなく部分的なリセット(日本のバブル崩壊、リーマンショックetc,)でも改善の見込みが無くなり、いよいよ膨張が止まらず舵が効かなくなってしまった場合、一番手っ取り早く速やかに全体をやり直す手段は大きな戦争を引き起こすことです。



当たり前ですが戦争だけは何としても避けてもらわなければ困ります。



ところが、世の中には戦争をやりたくてウズウズしているような輩がゴマンといますし、それを金儲けのチャンスと考えるもっとロクデナシな連中も控えています。

世界の良識ある実力者の方々には、何としても戦争ヤリタイ派の勢いをそいで、何としても最悪の事態だけは回避してもらいたいものです。


この先の経済情勢は、そう遠くない内に何らかの大きな変化に見舞われることは間違いないように思われます。もしそれが実際に起った場合、日本の社会や、その中で暮らすぼくたちのような末端の小市民の生活に一体どれほどの影響が出るのか、大になるのか小ですむのかさえ現段階では全く分かりません。

ただいずれにせよ大きな戦争や殺戮さえ起きなければ、たとえ国家が破綻してハイパーインフレが起きようとも、経済の低迷が数年間に渡って続き多大な忍耐を強いられことになったとしても、日本人なら何とかして生きながらえていけるような気がします。


長くなりましたのでまとめに入りますが、橋田壽賀子脚本ドラマ「99年の愛~JAPANESE AMERICANS」は、もしこの先に日本が再び困難な状況に陥いったときに、一人一人が何を一番大切にして生きていくべきかを問いかけているドラマだと思いました。

いついかなる時も誠実であることの大切さは、単なる道徳論に留まらず実際に困難を生き抜く上で必要不可欠でありかつ最上の知恵であることが、このドラマが伝える最も奥深いメッセージなのではないかと思います。




PS.今からそんな大げさなことを考えるのはみもふたもない気がしますが、もしそれが取越苦労ですんだなら、それはそれでハッピーなことです。ただ、世の中がこの先に大きく変化し始めることは、ほぼ間違いないことだと思います。その大きな変化の波に一人一人が備えることはやはり重要なことだと思います。


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プロフィール
HN:
鈍行翼
年齢:
42
性別:
男性
誕生日:
1982/05/07
職業:
エア作家/にわか写真家
趣味:
鉄道と写真ともろもろ・・・
自己紹介:
バセドウ病罹患者(勝手に寛解中)。

発病から10年以上経ちましたがようやく沈静化へ向かいつつある今日この頃。同時に人生の在り方を模索し続け小説という創作物に結晶化することを日々の生業とする。写真撮影は豊かな創造性とニュアンスの源泉です。

写真撮影の友:PENTAX K10Dと愉快なオールドレンズたち。
コンパクトはRICOH GX-8、R10、ケータイカメラCA006
フィルムカメラはPENTAX SPF、RICOH R1s、GR1s

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