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北海道の鉄道とか写真の話題など、、、日々の徒然を独り言のように細々と発信してみるブログ。小説作品執筆中。
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前回に引き続き、経済関連の屁理屈記事を書こうと思います。


今日はアメリカ社会の現状と実態についてまとめてみようと思います。


前回の記事で、リーマンショックのあらましについて書きましたが、おりしも、そのアメリカ金融市場を規制する法案にオバマ大統領が署名して成立したようですね。

この1,500ページにも及ぶ金融改革法案がいったいどういった代物なのか、素人のぼくにはまったく見当もつきませんが、1930年代以来の抜本的改革ということで、それ相応の意義のある法案なのでしょうね。

ただ、この法案は適用される範囲が広範に及ぶために、実際に施行された時にどういった効果を発揮して、どのような結果をもたらすかについては未知数な部分が多いようです。

そういったウォール街を中心とした、いわば上層社会の変革が動き出す一方で、底辺の労働者層では失業率の高止まりが続き、街には長期失業者が溢れかえっているという有様です。統計によると、アメリカの全国民のうち8人に1人が食料配給制度で食いつないでいるという、日本を遥かに上回る貧困格差が生じています。

そういった底辺層の実情が待ったなしの状態まで悪化してきたために、金融改革法と合わせて失業保険延長法案が可決されたり、先日、難産の末に成立した国民皆保険法などと合わせて救済策が急ピッチで進められています。


                           ★


アメリカの産業は1980年代以降、国内の製造業が軒並み人件費の安い日本に移動し空洞化が進みました。それと引換にして、ウォール街を中心とする金融産業が急速に成長して1990年代以降のアメリカ経済を支える主要な産業となりました。

世界中の貿易の決済や、あらゆる財やサービスの取引の基準通貨としてのドルを武器に、先に述べた規制緩和と金融システムの進化によって莫大な富をアメリカ社会にもたらすことになりました。

隆盛をきわめたウォール街では年収が日本円でゆうに1億を超えるサラリーマンが闊歩するようになり、CEOなどの重役にいたっては100億を超える報酬が貰い過ぎとの批判を浴びています。そのウォール街から産み出される豊富な資金を元手に、ハイテク、軍事、石油関連産業などが発展しました。こうした産業に携わる人々がアメリカ社会の上流層を成し、そういった人々の旺盛な消費によって日本を含む世界中の国々の輸出産業を支えてきました。

しかし、そうした上流層はアメリカ社会のごく一部で、そういった人々の生活や経済活動を支えるためのサービス業や物流などの産業を大多数の底辺層の人々が担ってきました。そういった、日本で言うところの3K+非正規雇用をアメリカではスレーブ(奴隷)産業と呼ばれています。

そういった産業に携わる人たちは2つから3つの職業を掛け持ちして何とか人並みの生活を維持していますが、不況で職を失ったり病気で仕事を続けることが出来なくなった場合、これまでは失業保険も健康保険も民間の高額なものを除いて充分な公的保険はありませんでしたから、民間の保険に入る余裕のない低所得者層はとたんに生活に行き詰ってしまいました。

日本では当たり前のように思われている失業保険や国民健康保険が、アメリカでは長年に渡る上流層の負担増反対を押し切ってようやく成立する運びとなったことは歴史的な成果と言っても過言ではないのです。


                           ★


こういった格差社会の構図は、ここ最近の日本の情勢とも重なりますが、日本の場合は衰退し始めたとはいえ、まだかろうじて中産階層が社会の主要層として支えています。ところが、アメリカ社会が決定的に違っているのは、国内の製造業各社が人件費の安い中国やアジア諸国への生産部門の移転が日本以上に進んでいるために、大手製造業を中心とした中産階級がほとんど消滅してしまっていることです。その結果、高学歴者が占める社会の上流層と低所得者層の間が無くなり完全な2極化が進み、それが定着することで世代を超えて格差が固定される社会構造になりました。


世界一の先進国アメリカの社会が抱える格差の度合いは発展途上国並と言われています。一説によると、先日サッカーワールドカップが開かれた南アフリカと比べて、治安の悪さと格差の極端さにおいてはそう大差無いとまで言われています。


                           ★


ここで気が付くべきことは、アメリカが世界で一番の物質的繁栄を謳歌しながらも、その繁栄に必要な物や財のほとんどを外国に依存し、自らはごく一部しか産み出していないという事実です。

それを可能にしているのが、再三申し述べている通り、金融市場と基軸通貨ドルを主体としたグローバル経済の仕組みですが、それが今、構造的に行き詰まりうまく機能しなくなってきています。

自ら汗水流して働いて何かを生み出すことをしない人たちが、知識と知恵を働かせてお金をかき集め、そういったことが可能な一握りの人間だけが繁栄と豊かさを教主し実権を握る、一方で、そうなれない残りの大多数の人々は貧しさと、さらなる脱落の恐怖で押さえつけられる、さらにそれのみならず、差別という楔を打ち込まれて貧しい者同士が互いに憎しみ合い暴力を振るうように仕向けられている、そんな世の中がアメリカ社会の真の実体です。

経済的に恵まれた家庭に育ち、能力素養にも恵まれて、努力を怠らず暗い脇道にそれることもしないで大学を卒業し、名の通った企業に就職しキャリアを重ねる・・・晴れて社会の上層部のポジションを獲得したとしても、その足元の社会の実体は上に述べたようなものです。そして、自分が立っている社会の明るい一面、一見すると前途が洋々と照らされているように見える世界も、その表の皮を一枚めくれば腐敗と欺瞞に充ち満ちています。

グローバル経済とは、より貧しい者たちが住む世界から、より豊かな者が暮らす世界に半ば自動的に富を吸い上げて実権を奪うものです。その不正と言っても差し支えない、巨大な富の流れの力を借りて築いた虚構の繁栄が、まもなくその寿命の限界を迎えようとしています。

                           ★


そういった虚構の繁栄と豊かさに長く浸りきっていると、たとえ元々がごく普通の善良な人であっても、やがて魂と精神が侵されて腐っていきます。いったん享楽の味を知ってその虜になり、精神が脱落の恐怖と猜疑に絡め取られてしまうと、そこから抜け出すことは至難の業です。アメリカ社会に酒と暴力とドラッグが深く根を張り続けているのも頷けることです。

そして実際に、リーマンショックの前後からエリート上層組に属していた人たちの脱落が急激に増え始めました。最初は飽和し始めたIT技術者層がより低賃金なインド系に取って変わられたことで、リーマンショック後にはその本体であるウォール街の金融大手社員を含む証券、銀行系社員、ショックの煽りを受けて経営が行き詰まったアメリカ自動車業界ビック3による従業員大量解雇etc...


これまで年収数千万円以上稼いでいた高所得者が一転して低収入の不定期雇用を掛け持ちするようになったり、それでもまだ仕事を確保できる人は良いほうで、ひどい場合は食料配給で食いつなぐだけのホームレスにまで転落する人たちもいます。また、アメリカでは掛金を運用するタイプの年金が一般的なために、リーマンショック後に運用益が激減し老後の生活設計が成り立たなくなる事例も相次いでいました。こうした、社会を支える主要層の脱落が止まらない状況に対して、何とかしてほしいという期待を一心に受けてオバマ政権が誕生したことは記憶に新しいところです。



                       ★(以下、後半)


しかし、急速に回り始めた負の連鎖を断ち切ることは容易ではなく、就任から1年半が経っても事態は良くなるどころか、地獄の坂を転げ落ちる火の車のごとく悪化の速度を早めています。

それに拍車をかけている最大の懸案は他でもない、前大統領のブッシュとアメリカの戦争屋であるネオコン一派が仕出かしたイラク・アフガン戦争が泥沼化して未だ終焉の兆しも見えないことです。


開戦以来、アメリカ軍兵士の死者数は4千人を超えましたが民間人の死者数は10万人以上と、その数十倍を数えています。死者数のみでなく、アメリカ兵の負傷者数はその数倍におよび、帰国後に精神に何らかの異常をきたす人がかなりの数に上るそうです。その中には、乱射事件を起こし多数の人の命を奪う痛ましい事例も起きていますが、一説によると普通の人が戦場で受ける多大なストレスに耐えうる期間は3ヶ月が限度と言われており、その限られた期間内で任務を終えて抑圧から開放されても、人格崩壊に至ってしまうような深刻なトラウマを抱えてしまう例が後を絶たないということです。


一方で、イラク、アフガンの民間人の死傷者も毎週のように起こるテロや戦闘などで未だに増え続けており、下げ止まる気配すら感じさせません。肉親縁者を奪われ、家や生活の基盤も破壊され住む土地を追われて難民化した人々の数はゆうに500万人を超えているとも言われています。

アメリカはこの全く意味のない、破壊と殺戮だけをもたらした戦争にこれまで100兆円の戦費をかけてきました。兵士一人を派遣するだけで年間1億円近くの費用がかかるそうです。戦費だけではなく、平時においても世界中で700以上の基地を要し、空母に戦闘機、潜水艦や戦車、ミサイルから核兵器に到るまで、世界に二つと並ぶ者のない最強の軍事力を維持するために、さらに膨大な費用を掛けているのは言うまでもないことです。


                           ★


アメリカ政府の財政は9.11テロが起きた2001年までは黒字で、アフガン戦争の火蓋が切られた2002年から赤字に陥入り、それ以来赤字財政が続いて2009年、2010年は2年連続で赤字額が1兆ドル(約100兆円)を超えました。その結果、累積赤字はすでに60兆ドルを越えています。

60兆ドルといえば日本円で約6千兆円ですから、現在、日本の国家全体で抱える借金800兆円強を遥かに超える額です。日本のように国債を国内で消化しているという(たとえ名目程度の意味しか無くとも・・・)”保障”はありませんし、社会全体を取り巻く状況も日本や諸外国に比べて一段と深刻な状態です。他でもない、アメリカ財政当局の責任者自身が、もはや返す当てのない天文学的な借金であることを認める発言をしています。

それにもかかわらず、いまだにドル破綻が表面化しない理由は、先に述べた巧妙な金融市場の操作と、万一、ドルが破綻した場合、世界中の経済活動が立ち行かなくなり、それだけは回避してほしいという全世界からの強い要望があげられます。そして、もう一つは超大国アメリカの信用が今すぐに崩壊するわけは無いという神話的盲信です。


                           ★


冷戦終結から20年、アメリカは世界唯一の超大国として軍事、経済、時には他の国の内政に到るまで深く関与し、世界中の国々をその覇権の下に支配してきました。

しかし、その完全と思われた世界統治の枠組みもイラク・アフガン戦争の開戦によってヒビが入り始めました。出口戦略を見失ったまま泥沼化し、ベトナム戦争の再来などと叫ばれていますが、実際にはそれを遥かに上回るダメージをアメリカ社会全体に与え続けています。

開戦におけるそもそもの大義名分は、9.11テロの報復聖戦でしたが、その実態は世界第3位の埋蔵量を誇るイラクの石油資源と、それと同様にアフガンにおいても豊富なレアメタル資源を強奪しようというものでした。


そんな人の道に外れた極みとも言える理由で戦争を始めて、終わらせる見込みまも無いまま、あれだけの破壊と殺戮の連鎖をもたらし続けているわけですから、その代償を払わなければならない時期が近づいているのも、またそれを避ける術はもはやどこにも見当たらないことも仕方のないことですね。日本も同盟国のよしみとはいえ、その戦争を是認し加担したわけですから、相応の代償を払わされることも必然的なことです。


次回は、これまでアメリカの繁栄と世界覇権を支える原動力となったグローバル経済そのものについて考えてみようと思います。


   (その三へつづく)

   (その一へもどる)

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HN:
鈍行翼
年齢:
42
性別:
男性
誕生日:
1982/05/07
職業:
エア作家/にわか写真家
趣味:
鉄道と写真ともろもろ・・・
自己紹介:
バセドウ病罹患者(勝手に寛解中)。

発病から10年以上経ちましたがようやく沈静化へ向かいつつある今日この頃。同時に人生の在り方を模索し続け小説という創作物に結晶化することを日々の生業とする。写真撮影は豊かな創造性とニュアンスの源泉です。

写真撮影の友:PENTAX K10Dと愉快なオールドレンズたち。
コンパクトはRICOH GX-8、R10、ケータイカメラCA006
フィルムカメラはPENTAX SPF、RICOH R1s、GR1s

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