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北海道の鉄道とか写真の話題など、、、日々の徒然を独り言のように細々と発信してみるブログ。小説作品執筆中。
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前回の記事に引き続いて苗工一般公開の様子です。付近を歩いているとトラバーサーによる移動実演が始まるというアナウンスが聞こえたので見学して見ることにしました。実演が始まり左の棟から出てきたのは車両移動用特殊車両のアントです。ちなみにアント一台新築の家一軒分の値段だそうです(汗)





奥に見える屋根付き橋のような構造物がトラバーサーと呼ばれる装置です。工場内で車両を異なる線路へ移動する際に複雑な前後切り替えを繰り返さなくても済むよう、車両を載せた橋桁ごと平行移動して転線出来る鉄道の工場を代表する装置の一つです。中央の銘板に国鉄浜松工場昭和44年製とあります。先ほど登場したアントがタイヤモードでトラバーサーのある線路まで移動していきます。



 
トラバーサーの前まで来るとタイヤを引っ込めて90度ずらして取り付けられた車輪を使いそのまま対岸の整備棟までレール上を移動します。

もうネタバレですが、対岸の棟のシャッターが開くと元学園都市線用PDCが姿を表しました。







PDCをアントに連結するとそのままトラバーサー内に引き込みこちら側の岸に出たところで一旦アントを切り離します。

アントが再びタイヤモードで移動を始めると車両を載せたトラバーサーも移動を始め思ったよりも素早くこちらに向かって接近し目の前で停止しました。

ゆっくり移動してきたアントが到着すると再び車輪で線路上に乗りPDCを連結しました。ここまでリズミカルな笛の合図によるとても素早い連携作業でした。




 
そのままアントに引かれたPDCは最初に開いた整備棟の中へ吸い込まれていきました。PDCの姿が整備棟内に完全に取り込まれシャッターが閉じたとところで実演終了。拍手の解散となりギャラリーはそれぞれの向かう先へ去って行きました。

実演終了後もしばらく留まり辺りを観察してから次の場所へ向かいました。(後半に続きます)
 
  



  
続いて内燃機(エンジン)整備棟に向かいました。

エンジン試験台ではDD51かDE15のものと思われるDML61Z系エンジンが装荷されていました。

気動車用に比べて機関車用のV12エンジンはかなり大型です。






手前の試験台には振り子気動車用のコマツ製エンジンが据えられて稼働中でした。


近くにいると耳がキーンとするほどの大騒音でした。





奥のエンジン整備場では各タイプの気動車用エンジンがディスプレイされていました。その道のマニアにとってはたまりませんね~(>_<)

一台目は主にキハ40系に装備されている国鉄型オリジナルエンジンDMF15HSA型です。安定性と頑丈さがうりの古いタイプのエンジンです。出力は250馬力。




先ほどの試験台場で稼働していたものと同タイプのコマツ製DMF11系エンジンです 。現在の鉄道車両用エンジンとしてはニイガタ製と並んで主流派をなしています。同社の建設重機用モデルをベースとして小型軽量で高出力なのが特徴です。JR北海道では振り子特急用1車両につき2台を搭載しています。出力は355馬力。





こちらは新潟鐵工所製のDMF13HZ系エンジンの最新モデルです。見たところ使用された形跡のないまっさらな新品のようでした。説明書きを読むと出火事故を起こした特急北斗用キハ182型の交換用でキハ261系に使用されているものと同等品とされています。元々のエンジンから比べて落ちた出力は高性能な多段直結変速機との組み合わせで補っているようです。出力は460馬力。




一番奥の一角に置かれていたのは先ほど触れた特急北斗出火事故の当事車が装備していたDML30HZ型エンジンの同型ベースモデルであるDML30HSJ型エンジンです。全盛期の国鉄が渾身の技術を使って作り上げた水平対向12気筒大型エンジンです。上で紹介した標準型6気筒エンジンの倍の数のピストンで高出力を発揮する設計です。精微なアナログ技術の粋を集めた逸品です。




通常は向かって左側にだけあるピストンユニットが右側にも対象に配置されているのが特徴です。写真のHSJ型の出力は550馬力で設計の上限以内で使用されていたことから大きなトラブルは起きませんでした。HSJ型をベースに中間冷却器を追加して設計最上限の660馬力まで出力を上げたモデルが問題のHZ型でした。特急北斗の高速化にあわせて改造されたことによる日常的な過負荷運転に部品が耐えられず事故に繋がりました。



事故の原因となったスライジングブロックと呼ばれる小さな部品が入っている燃料噴射ポンプが写真左側に写っているひょうたん型の断面をした部分です。出火事故は同部品が破損した際に燃料の供給を止める装置が無く噴射し続けたことで起きました。原因が解明したことでスライジングブロックに負荷がかかることを予防する装置と万一同部品が壊れた際に燃料の供給が即停止する二重の安全装置が追加されています。


これらの安全対策が実施されたことで少なくとも同じ部品の故障による出火事故は物理的にほぼ間違いなく起きえないと言えるレベルまで改善されました。

ただエンジンそのものの老朽化からくるトラブルが起こる可能性と全体の信頼性の問題が残ることから、事故を起こしたHZ型から優先してエンジン交換を実施しHSJ型やオホーツク系統の車両に搭載されているHSI型も含めて12気筒大型エンジンは今後数年以内に全廃させる方針だそうです。
 
趣味者としては国鉄黄金期を象徴する技術の一つが完全に役目を終えてしまうのは寂しいことですが安全運行を確保するという鉄道運行の絶対使命に比べれば個人的な感傷に過ぎません。

 
 
一般公開日でも整備場では黙々とエンジンの分解整備が行われていました。JR北海道の約半数がディーゼル気動車ですが、そのうちの半分の車両のエンジンをこの苗穂工場の現場で支えていることになります。これまで以上に安全対策が強化されることで車両のコンディションが向上し安定した運行が維持されることが期待されます。




小耳に挟んだ情報によれば、運行が再開された特急北斗系統の一部ですでに確認されている新型機関換装車は今後DML30HZ型を優先して交換が進むことで増えるそうで、現在苗穂運転所に留置されているお座敷車2両についても対策を実施して運用に復帰する予定があるとのことです。

定期列車に必ず連結される車両ではないのでこのまま除外されるのではないかと危惧していましたが何とか命脈を保ってくれたようです。

ぎりぎりの両数で運行されているキハ183系グループの中で稼働車両が不足した場合の助っ人としても動物園号やお座敷車は使用できるので残されたのではないでしょうか。

550馬力のHSJ型は先に説明した対策を実施したうえで今後3年ほど使用する計画だそうです。

他にもコマツ製のエンジンは耐用年数を過ぎると新品に交換することが前提の使い捨て的な今風の設計であるのに対して、もともと船舶用に設計されたニイガタ製のエンジンは洋上航海中の修理にも対応したメンテナンスのやり易い長く使える設計になっているといった興味深い話が聞けました。

(JR北海道と同様の振り子特急を運行している鳥取県の三セク鉄道は約6年周期の全般検査のごとに新品のエンジンに交換してしまうという話を思い出しました。これは通常20年以上は使用してその車両の廃車まで交換しない場合も多い鉄道車両のエンジン交換周期としては極めて短い事例です。)

次回も苗穂工場一般公開の様子を紹介します。


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HN:
鈍行翼
年齢:
42
性別:
男性
誕生日:
1982/05/07
職業:
エア作家/にわか写真家
趣味:
鉄道と写真ともろもろ・・・
自己紹介:
バセドウ病罹患者(勝手に寛解中)。

発病から10年以上経ちましたがようやく沈静化へ向かいつつある今日この頃。同時に人生の在り方を模索し続け小説という創作物に結晶化することを日々の生業とする。写真撮影は豊かな創造性とニュアンスの源泉です。

写真撮影の友:PENTAX K10Dと愉快なオールドレンズたち。
コンパクトはRICOH GX-8、R10、ケータイカメラCA006
フィルムカメラはPENTAX SPF、RICOH R1s、GR1s

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