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北海道の鉄道とか写真の話題など、、、日々の徒然を独り言のように細々と発信してみるブログ。小説作品執筆中。
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今日はこの春、話題の映画「アリス・イン・ワンダーランド」を観てきました。


これまでジョニー・デップ主演の作品を映画館で観たことは無かったのですが、ついこの間、テレビで放映された「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ三部作が予想以上に面白かったので、その宣伝戦略にまんまと乗って映画館のスクリーンで観ようと思ったのです。もともとハリウッド映画や俳優にそれほど興味がある方ではないのですが、ジョニー・デップはその存在を知ってから気になる存在でした。あの、どことなく間のズレたコミカルさや、それとは正反対に沈黙の中で悲しみや怒りの情感を込める演技力は彼ならでは魅力ですね。彼の主演映画を初めて観たのは、同じくTV放映された「チャーリーとチョコレート工場」でしたが、大金持ちの主人公が純粋な優しさを持ちながらも、それゆえに世間の常識から遠くかけ離れて引きこもってしまった姿を味わい深く演じていました。あの映画を見ていると、時節柄、マイケル・ジャクソンがネバーランドに引きこもって世間やマスコミからあることないことでっち上げられながら騒がれていたことと重なります。とにもかくにも「チャーリーとチョコレート工場」の哀愁ただよう演技を目にして以来、ジョニー・デップは好きな役者になりました。


本作「アリス・イン・ワンダーランド」は有名な古典ファンタジー文学「不思議の国のアリス」の主人公アリスが成長して再びワンダーランドに戻るというオリジナルストーリーの映画です。ぼくは残念ながら原作をまだ読んだことがないのですが、今回の映画は原作とは関係なく楽しめるような娯楽作品としてまとめられていたので、原作の内容を知らないために楽しめなかったということは全くありませんでした。映像は奇抜なキャラクターや幻想的な世界観を表現するために全編にわたってCGアニメや合成技術が駆使されています。こういったCG技術も出始めの頃は、その効果に頼り切っていたり、不必要なまでに強調されて肝心の演技やストーリーが埋没してしまうなどの失敗が目立ちましたが、本作はそういった弊害に囚われることなく、ティム・バートン監督の魅惑的な世界観を余すことなく再現しています。


奇抜なキャラやCGで作りこまれた派手な演出、話題の3D効果など(ぼくは目がつかれることや、細かいところをじっくり見るには2Dの方が適しているのではないかという判断で3Dを見送りました)見た目のインパクトとは裏腹に、ストーリー自体は主人公のアリスの成長物語と勧善懲悪の対決劇を組み合わせたお決まりの手堅い構成です。その点だけを見れば、主人公が悪に立ち向かって打ち勝ってメデタシx2のもはや見飽きた娯楽映画でしかないような気がしますが、そのお約束のストーリーの一つ一つの場面ごとに深い人生模様を漏らすこと無く織りまぜている点が見事です。同じくティム・バートン監督による「チャーリーとチョコレート工場」では、「アリス~」とは反対に奇妙で理解し難い設定とストーリー展開の中に、普遍的な心情表現を織りまぜることで多くの人が共感できる内容に仕上がっていました。そして「チャーリー~」にも「アリス~」にも根本的に共通することは、主人公の行動や思考を通して、みんなが常識だと思い込んでいる価値観の中にあるエゴや矛盾を浮かび上がらせていることです。

19世紀の貴族社会を風刺した冒頭のシーンは笑えます。でもそれは、はるか昔の滑稽な貴族文化というよりは、現代の一般社会の見栄としがらみを皮肉った内容に見えます。アンダーランドに落下した後に登場する善悪様々なキャラクターは、誰一人として常識のバランスを保っている者はいません。みんなどこかズレて狂っている様子は、常識という平均値を取り払った現実の社会に生きる一人一人の人間のリアルな描写そのものように見えます。そういった混乱を一人突き破るアリスとその仲間たちのやりとりの中に、ぼくたち見る側の人間にも通じる”生きるヒント”が散りばめられています。少し拾い上げてみると、予言の筋書きに外れた行動を取ったアリスが「私には未来を創造する力がある」と言う場面や、白の女王に救世主として戦うかどうか選択を促された時に言った「誰かのためにではなく、自分の未来を勝ち得るために私は戦う」というセリフの中に、この作品の主要なメッセージを読み取ることが出来ると思います。


ぼくがこの作品の中で一番気に入った場面は、ジョニー・デップ演じるマッドハッターが、ふと我に帰った時に自分はイカレているのではないかと動揺し始め、アリスが彼に対して「イカれていると思う、でも偉大な人はみんなそうだった」と自身が亡き父に同じ問い掛けをして返ってきた答えを繰り返したシーンでした。あの時のマッドハッターの表情に浮かぶ恐れと悲しみの心情は真に迫るものがありました。それは作中で演じるジョニー・デップ自身が感情移入した数少ないシーンだったと思います。また、その時の心情は真の自分を確立するために自分の殻を乗り越えてきた者が一様に経験する思いの顕れだったのかもしれません。ユーモアの中にも生きることの根底にある悲しみを織りまぜた名シーンだったと思います。


今回の映画は、わざわざ映画館まで足を運んでお金を払ってでも見る価値のある映画でした。誰しもが楽しめるシンプルな娯楽ストーリーの中に、奥行きのある人間描写が織り込まれていて見応えがありましたし、あえて描かないことによって伝わるメッセージもありました。そういった表現の巧さを学べるという点でも有意義でした。ジョニー・デップの演技を初めて大スクリーンで堪能しましたが、それによってますます彼の演技が好きになりました。来年には「パイレーツ・オブ・カリビアン」の新作公開も予定されているそうで、その時はまた映画館に足を運ぶことになりそうです(^^;)


 映画公式サイト⇒ http://www.disney.co.jp/movies/alice/

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HN:
鈍行翼
年齢:
42
性別:
男性
誕生日:
1982/05/07
職業:
エア作家/にわか写真家
趣味:
鉄道と写真ともろもろ・・・
自己紹介:
バセドウ病罹患者(勝手に寛解中)。

発病から10年以上経ちましたがようやく沈静化へ向かいつつある今日この頃。同時に人生の在り方を模索し続け小説という創作物に結晶化することを日々の生業とする。写真撮影は豊かな創造性とニュアンスの源泉です。

写真撮影の友:PENTAX K10Dと愉快なオールドレンズたち。
コンパクトはRICOH GX-8、R10、ケータイカメラCA006
フィルムカメラはPENTAX SPF、RICOH R1s、GR1s

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