北海道の鉄道とか写真の話題など、、、日々の徒然を独り言のように細々と発信してみるブログ。小説作品執筆中。
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稲穂の風景を求めて函館本線の峰延~光珠内間を訪れました。晴れやかな初秋の天気の下さっそく撮影に臨みました。
稲穂が垂れた田んぼの奥をカムイが走り抜けましたが背景に埋もれてあまり目立ちません。
本命の赤い電車が早くも登場。
これぞ秋の田園風景という景色の中さっと走り抜けて行きました。
後ろ姿をそのまま追いかけると次の光珠内駅に停車する様子が遠目で確認できました。
ポジションを変えて望遠レンズで寄ってみると光珠内駅の様子をつぶさに観察することが出来ます。
先ほどの赤い電車の普通列車はゆっくりと美唄方面へ走りだしました。
右も左も田んぼが拡がる一本の道路をアングルを探しながら行ったり来たりしていると踏切が鳴り始めました。その場で立ち止まり望遠レンズのまま構えていると3両編成のミニ特急サロベツがやって来ました。
パッと見で道北地方のような印象になりました。
再びポジションを変えて今度は線路に近づくと、目の前の田んぼの区画で収穫作業がたけなわでした。再び踏切が鳴り始めると今度は貨物列車が通過していきました。予想外の登場でしたが石北貨物のシーズンということで北見まで玉ねぎを積みに向かう臨時列車だと思われます。
先月末のダイヤ改正以前は赤い電車天国だった函本の岩見沢以北の区間もその半数以上が721系の進出で置き換えられました。
その721系といえども初登場が昭和の末ですから今まで進出しなかったほうが不思議といえば不思議なことでした。
つづきは次回の記事にて。
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9月に入って涼しくなるとおもいきや夏の暑さがぶり返しているような生暑い部屋の中で記事を打っています。
ダイヤ改正による711系赤電車の運用削減直前の先週は、今後は見られなくなるであろうシーンやカットを追い求めて自分でも驚くほど精力的に活動していました。
体調のコンディションも決してベストでない状況のなかでおおよそ4日間、ある日は早朝から、ある日は午前と午後で、またある日は夕方から夜のバルブ撮影までとメリハリをつけながら、これまでに撮ることができていなかったカットを効率よく収めていくことができました。
終わってみると自分でもよくこの短い間にこれだけのシーンを記録できたなと思うほど充実したカットの数々が揃っていました。
その中から8月27日の夕方に豊平川橋梁で撮った238Mの写真を掲載します。
ラストウィークですがより普段着に近い前向きな写真になるよう意識しました。子供時分の原点とも言える場所で晴れた日差しのもと忘れがたい記念の一枚となりました。
途中本当に体調が悪くなってリタイヤしようかと思った時もありましたが、合間に休息を挟んで体調の回復をはかり、また気合いで身体を奮い起こして動き出したあとも登山をする時のようなゆっくりとしたリズムで行動することを心がけて体力を温存しました。
なんだかとても大げさな話に聞こえますが、長年病気を患って色々なところにガタが来ている身で重い機材を担いで行動しながらの撮影はいつも体力の消耗との闘いです。
いざ撮影本番の時も体力が消耗したせいで雑な仕上がりにならないよう一枚一枚撮るごとに集中力を途切れさせないよう努めました。
それは結果的に安全に対する注意力を途切させないことにもつながっています。
今回なぜそこまでして赤い電車を追いかけているのかというと、それはラストシーズンということだけではなく、自分が物心ついた時から鉄道好きでその頃から親しんできたある意味で最も象徴的な列車の最後の季節だったからです。
これまでは自分の体力と許された行動範囲の中で撮影の対象を取捨選択することは避けられなかったのですが、すでに記憶と思い出の中に走り去った被写体と向き合っていた時について思い返せば、たとえそれが自分が許された範囲で全力を尽くした結果だったとしても、やはりどこかでこれしか記録に収めることが叶わなかったという後悔の念が気持ちの片隅に残っていました。
今回の撮影にしても100%完璧に自分で納得の行く結果になったとは言えないでしょうが、それでも自分の気持ちの中で”これしか撮れなかった”ではなく”ここまで撮って残すことが出来た”と心底納得のいく結果が得られそうです。
そしてその自分が心底感じとれた納得感こそが一番必要なものだったのです。
現実の世界の中で赤い電車がどれほど魅力的な存在であったとしても、それが人間が作り出した機械である限りその寿命は有限であり、いつか必ずその時が来れば役目を終えて取り替えられていくのは仕方のないことです。
それは一個人の力ではどうしようにも変えようのないことですが、それでもその魅力のニュアンスの一旦だけでも、その存在すら知り得ない後世の人たちの目に留まるように記録として残しておきたいのです。いつかその魅力の真価が本当の意味で省みられる時が来ることを信じて。
一般の人たちから見ると、たかだかよくある古い電車の一種にすぎず興味の対象にすら成り得ないかもしれませんが、この電車が持つ穏やかで優しい時間と心地よいリズムが混じり合って発せられる独特なオーラが、最近の無機質な社会の中で生きる一人一人の中で急速に失われていく心の豊かさやユトリと重なり通じ合うものがあると思うのです。
残念ながら今の人間社会の総合的な意識は、そういった情緒豊かな時間をたたえた存在よりも、より便利で素早く自動的に目的が叶うようなものを追い求める方向性を変えたくないようです。
たとえその行き着いた先が心の豊かさの正反対だったとしても、一見して煩わしさを取り除いてくれそうな都合のよい便利さと無意識のままでいられる居心地の良さの虜として生きる時代はそう簡単に終わらないでしょう。
そういった何事も心と意識を動かさないで済ませようとするものぐさが生み出した時代のアンチテーゼとして見なすのは少し強引すぎるかもしれませんが、赤い電車の小さな窓から見える移りゆく景色と若干の隙間風が凝り固まった意識をちょうどよく解きほぐしてくれた記憶とともに、そんな無意味な拘りの一切をきれいに流し去ってくれるようです。
今の時代の意識はあるところで行き着くところまで来てしまったように感じます。
その限界が来てある臨界点を迎えた時に過去の意識の形の一つとして記憶される時がやってくると思います。
いつかその時を迎えた時には新しい意識のあり方が芽吹き、その新しい存在に適した生き方ができる一人として自分の存在を新たにしたいと願っています。
ちょっと謎めいた言い回しですが素直にニュアンスだけを言えばこうなってしまいます。
9月からは心機一転、新たな気持で創作活動に打ち込みたいと思います。
自分の中でまだまだ宿題や課題が多く残っているのでトントン拍子というわけには行きませんがそれでも一つ一つ難題をクリアしながら、やがては作品の完成に一歩でも近づけられるように意識を集中したいと思っています。
時代が動き始める気配が感じられる秋が近づいています。
ダイヤ改正前最後の日を迎えました。
御存知の通り711系運用の約半数が今日の運行をもって終了となります。
すでに明日からの運用の兼ね合いで一部の列車が一足早く721系で運行されているようです。
711系運用の中で花型列車とも言えた小樽→旭川間のロングラン運用も今日で最後の予定です。
朝の旭川行2151Mはあえて自宅近くから微かに眺めるだけで見送り、午後の折り返し回5238Mを地元らしい風景の場所で撮ることにしました。
美原大橋をバックに江別←豊幌間を走る回5238Mです。
やや難しい真横カットでしたが一般色+復刻色の組み合わせを一枚の中に記録できて満足しています。明日からはこの列車も後任の721系6連に置き換えられているのでしょう。
列車が通過する直前まで構図に悩み使用するレンズを吟味していましたが、以前に来た際に使用した35mm(=フィルム換算で約52mm)の手堅い選択が結果的に功を奏しました。
自分にとって最後の撮り納めの一枚とあって自宅を出る前からあれやこれやと考えていましたが、現場に着いて構図探しや練習をしているうちにあっという間に本命の列車が接近してきました。
緊張しないように肩の力を抜いてからカメラを構えると早くもファインダーの中を6両編成の列車が真横に走り抜けていきます。
最初のシャッターポイントに差し掛かったところで一枚切り、すかさずファインダーを横に流しながら1枚、2枚、3枚と切り続けたところで最後の回5238M711系6連はすでに走り去ろうとしていました。
いつもこうなのですが、長年慣れ親しんだ列車の最後は本当にあっけないものです。
明日からは若干寂しくなった現実を受け入れなければなりませんが、それもこの道を愛好するうえでの宿命のようなものかもしれません。
それでも今日の晴れ姿を自分としてはベストな形で残すことが出来て本当に良かったと思っています。
いずれ実物の列車は走り去ったとしても、その魅力とエッセンスはそれを知る人たちの記憶の中で決して色褪せることはないと思うからです。
赤い電車こと711系電車の終盤の第一幕が降りようとするその時その場で立ち会えた縁に感謝しています。
まだしばらくの間、活躍の機会が残されている時間をこれまでどおり見守っていこうと思います。
先日、小樽発旭川行き列車で乗り通した際に通過した張碓海岸を眼下に望む岡の上まで行ってきました。
例のごとく朝早起きしてどうにか辿り着くことが出来ましたが、おかげさまでこれまで数年越しで恋焦がれていた名撮影地において赤い電車の夏らしい姿を収めることが出来ました。
恵比須岩の横を小樽へ向かって走り抜ける赤い電車は前回とちょうど逆パターンのS-113とS-110の組み合わせでした。本当にようやく終焉間際になって撮影が叶いましたが、何よりも失敗しないようオーソドックスな構図で臨みました。他にもいくつか構図案がありますが、もう一度機会があれば挑戦してみたいです。折り返しの2151Mは違うパターンで撮影しました。
北の赤い電車711系の最終期の記録を纏めたマイ・アルバムもようやくレパートリーが揃ってきました。
もしも計画されている減便案が予想される一番単純なパターンなら、花型運用である2151M旭川行き長距離列車をはじめ夕方の手稲入庫列車や夜に走る唯一の区間快速列車などまとめて削減される可能性があります。
その予測が現実なら赤電711系が元気いっぱいで輝いている姿を収められる期間はちょうど残り一ヶ月ということになりそうです。
運良く花型運用全体が残ってくれると嬉しいのですが、そういくかどうかはダイヤ改正の詳細が分かる時まで待たなければなりませんね。
いずれにしても、残りそう多くはない撮影や乗車の機会を一つ一つ大事に活かして記録と記憶のアルバムにピリオドを打ちたいと思っています。
野幌駅手前の高架線上を旭川方へ走り去るL特急カムイの後ろ姿を写した何気ないスナップですが、実は超低速徐行で走っていたのでケータイカメラでも余裕で写し止められました。しかもこの直前には高架線の入り入り口付近の信号手前で完全に停車していました。どうも先行していたキハ201系気動車の普通列車に何かトラブルが発生したようで野幌駅をしばらく発車できなかったことが原因だったようです。
前回の記事でJR関連のことについて言及しましたが、こうしてみると老朽化した車両の小さなトラブルは日常茶飯事のようで、毎日の決められた運行をダイヤ通りにしっかり走らせることがもはや綱渡りのような状態であることが伺えます。
JR北海道のHP内のプレスリリース欄に掲載された再生推進委員会の議事録なるPDF資料に何気なく目を通してみましたが、概ね内容はすでに新聞やニュース等で既知のことを繰り返しているだけで目新しい物はありませんでしたが、その文面からはどうも不可解で意図がいまいちよくわからない記述も見受けられ、事態をめぐる社内外で混迷をきたしている実情も伺えます。
その中でもやはり指摘されていたのが車両の老朽化の深刻さについてで、JR北海道が保有する1,100両にのぼる車両の内、約700両が製造から20年以上が経過し取替えや何らかの修繕処置が必要と明記されていました。
つい先程トラブルを起こしていたキハ201系は1996年製の比較的新しめの高性能車両で、まだ指摘されている700両のうちには入っていませんが、その状態を見るとすでに老朽化が進行しているのは確実なようです。
鉄道車両を新製するためには1両につき約1億円から2億円程度かかることから、もし老朽化した車両全てを新車で置き換えるとなると単純に700億円以上の投資が必要になってしまいます。
線路の枕木問題をはじめ、駅舎や信号などの施設関係や橋梁やトンネルなどの土木建築関係の老朽更新も差し迫っていますから、車両だけでこれだけの安全投資を一度に行うことは難しそうです。
議事録資料でも言及されていましたが、JR発足前に国の予算と事業で施設車両双方に対して手厚く対策が実施された状況でスタートしたために当初は修繕費用がかからない状況で、その分を都市間輸送の高速化を目指した新型車両の投入に振り向けすぎたことから、今現在になってその時期に登場した車両が一斉に老朽化したことと、発足当初は十分に整備されていた線路や施設が老朽化してしまった時期が重なってしまったことが今日の深刻な事態に至ってしまった主な要因と結ばれていました。
その他にも北海道の主要産業を支える貨物列車の運行に対する負担の割合についてや、税金を投じる国家事業によって管理される道路事業を引き合いに出して、橋梁やトンネルなどの施設管理負担の在り方について暗に妥当なのかどうかという、やや押し込めたニュアンスに控えつつも主張したい旨が見受けられました。
同じJRの名を冠して日本各地の鉄道を日々運行している会社でも、もともと株式上場を果たしている完全な民営会社としてスタートを切ったJR東日本、JR東海、JR西日本と、国の特殊法人が全株式を保有し特別に設けた安定化基金の利息に頼って赤字を埋め合わせることを義務付けられたJR北海道をはじめJR四国、JR九州の離島三会社と比較すると、その経営財力の差は一般的に思われているよりもはるかに大きなものです。
言うなれば自動車会社や有名電気メーカーと並ぶ正真正銘の一流大企業と同等なJR東日本をはじめ本州三社と、地方で細々と事業を営む中小零細企業と収益規模においてはほとんど差がないくらいに脆弱な経営体質しかもたないのがJR北海道を含む離島三社です。
ですから、一概にJR東日本や他の鉄道会社がしっかりやっているのにJR北海道は全く話しにならないくらいにずさんな経営しか出来ていないと全部決めつけてしまうには少し無理があると思います。
広大な大地に点在する都市や町々の間を延々と続く無人口地帯を駆け抜けるような赤字長大路線をいくつも抱えて、しかも日本の中で最も厳しい気候条件の中で運行しなければならないという悪条件を全て抱え込んだ上で四半世紀もの間、最初から脆弱な経営体質しか与えられていないにもかかわらず列車の高速化を達成しながら全道各地を結ぶ列車の運行を続けてこれたことは並大抵の努力ではなかったと思います。
もしも鉄道以外の飛行機や船舶、あるいは道路上を行き交うトラックやバスやタクシーなど、営利目的で交通輸送に従事している民間事業者が、その足元の公共インフラである道路や橋やトンネルなどの付帯施設を含めて、さらに空港や港湾などの大型公共インフラの維持管理義務とそれらにかかる費用コストを(若干の補助金付きであったとしても)もほぼすべて自前の収益の中から負担しなければならなくなった場合、ほとんどの民間事業者の経営は成り立たなくなります。
こういった公共の輸送交通を担う事業者の中でなぜか鉄道会社だけが、その不可能に近い負担をすべて背負って運行し続けるという離れ業に近い経営を民営化が伝家の宝刀のように振るわれた時代から今に至るまでずっと継続させられています。
それはJR北海道に限った問題でなく、他の離島三会社のJR九州やJR四国やJR貨物も含めて、そして旧国鉄の赤字ローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道や私設のローカル私鉄など日本の全ての地方鉄道事業者が抱える深刻なジレンマです。
ここで”赤字=無用の長物だから無くしてもいい”という考え方は、無理な完全民営化を推し進めてしまった時代特有の誤謬であったことを確認してみたいと思います。
そもそも鉄道事業はそれ自体単独で大きな収益を上げられる経営モデルとして成立する場合はごく限られたもので、ほとんど場合は人や物資を大量に安く輸送することで地域経済やその他の産業の利益に貢献することが第一の使命で鉄道事業自体は赤字体質であることのほうが多いのです。
そんな中でも鉄道事業自体で大きな収益を上げられる場合は、首都圏や関西圏などの超大都市圏の中短距離の通勤輸送や大手私鉄路線、または大都市と地方中核都市を高速で結ぶ新幹線など、ごく限られた例外にすぎません。
(※札幌圏などの200万人以上の人口を抱える中核都市圏の地下鉄や都市間輸送であっても実は赤字ギリギリの採算ラインで運行されているのが実情です。)
そこで鉄道事業が地域の産業や経済、そこに住む人々の暮らしの利便性に貢献した分を税収などの公共予算の中からキャッシュバックして還元することで、安全運行に必要な維持管理費用に充てるという方針はむしろ自然なことで、世界中の主要な国々の鉄道事業の経営体制を見ても施設維持を公費で負担する完全な国有鉄道や公社運営による事実上の国営鉄道の方が民営会社よりもはるかに多いのが知られざる世界の実情です。
日本の国鉄完全民営化の先行モデルケースとなった1980年代イギリスのサッチャー政権時代に打ち出された大規模な民営化と規制緩和政策の目玉事業の一つとして実施された国内の鉄道路線の完全民営化策は、他のヨーロッパ諸国に先駆けて行われた先進的な事業として評価されていたにも関わらず、1990年代に入ると事故や運休や遅れが常態化し車両や施設の荒廃が目立つなど、まるで最近のJR北海道のような異常事態がイギリス全土の鉄道で発生しました。
完全民営化による極端なコストカットと人員の急激な削減が響いたことで、もはや安全運行を続けることが困難な情勢に対して国民の大きな反発が起こり、その事態を重く受け止めた時の政府は早々にサッチャー政権時代の完全民営化方針を転換し、イギリス国内の主要な鉄道事業の上下分離化をはかり、線路や施設など安全運行にとって重要な資産の保有と維持管理を再び国が担うことにして、列車の運行事業のみを民営会社に任せることで安全運行とサービスの維持を可能なようにしました。
このようなイギリスの失敗の先例から学んだ他のヨーロッパの国々はもちろん、アジアや北米など主要な国々の鉄道事業の在り方において完全な民営化方針を積極的に採用しようとする国はほとんど現れませんでした。
ところが、こういった失敗例があったにもかかわらず鉄道事業の完全な民営化を押し進める方向を選択し、ある意味においてイギリスの鉄道事業民営化の例以上に厳しいハードルを課せられた状態に置かれていた上でそれ以上の離れ業に近い民営化を成し遂げてしまったのが他ならぬ日本の民営化鉄道会社=JRだったのです。
(※手本とすべき世界の鉄道をいくつか例に上げると、やはり一番の先進地域はヨーロッパ各国の鉄道で意外にも半数近くの国が国有鉄道のままで、その他は列車の運行だけを民営会社に任せている上下分離式の国がほとんどです。これは公共性と収益性という相反する要素を両立しなければならない鉄道事業において公共負担と民営化のメリットを天秤にかけて適切なバランスがとれる経営構造を採用した結果です。その他の国や地域では、アメリカやカナダなど北米の鉄道は民営ですがほとんどが貨物専業鉄道で一部の旅客列車や都市近郊のライトレールやコミュータートレインは主に公社が運行しています。中国やロシアは元が社会主義国でしたからご想像の通りかなりの純度の国有鉄道です。北朝鮮は三代金将軍家のさながら私有鉄道のようですが、ほぼ全ての主要幹線の電化を完成させているという知られざる先進性があります。隣国の韓国は上下分離式の公社経営でKTXなどの高速新線を建設すると軌間が同じ在来線の通勤列車や貨物列車も新線へ移行し一本化することで経営の合理化を図っています。準日本式の新幹線を導入した台湾高速鉄道は新設の民営会社ですが並行する在来線は事実上の政府所有の公営鉄道です。高速鉄道は飛行機並みのサービスと速達生をもって、公営の在来線は安い運賃と大量輸送を売りに差別化を図りながら互いに競わせることで両者とも収益を上げながら存続を図っています。)
日本の鉄道事業民営化の特徴は、高収益が見込める首都圏や関西圏、中京圏の大都市近郊輸送と新幹線を要する本州東部と西部と中部の三社と、そういった高い収益の柱を持たない四国、九州、北海道の離島三社と貨物事業をそれぞれ分離したことです。
前者の本州三社は経営の負担となる不採算部門を切り離すことになり、そのお陰で常に高収益を上げられる経営環境を維持できる名実共に民営大企業になることができた一方で、自力では採算が成り立たないことが明白な離島三社と貨物会社については国が特殊法人を介して全株式を保有することで完全な民営化を達成するまでの猶予期間を設けて負担を一部免除されることで一応の決着がなされました。それは光が当たる部分と影となる部分を選り分けることで一時の華々しい成功を収めましたが同時に文字通り明暗を分けるほどの格差を生み出す結果にも繋がりました。しかし当時は鳴り物入りで始まった民営化ブームの波にかき消されることで客観的な検証もなされないまま民営化の成功神話だけが一人歩きしはじめました。
(※JR本州三社は当初の見込みよりも好調な業績を上げる事が出来ましたが、そこで得られた大きな利益は株式市場と株主へ還元されるだけで、離島三社をはじめ第三セクター鉄道を含めて旧国鉄時代から引き継がれた地方路線へ再配分される仕組みは設けられませんでした。そのため地方路線の維持をほとんど自力と自前の借金で賄わなければならない厳しい経営環境が今なお続いています。また先の大震災で甚大な被害を受けた沿岸路線の復旧が遅々として進んでいない遠因の一つにもなっています。)
そういった玉虫色の決着がなされた状態で民営化されてから25年以上の月日が経過した今、JR北海道において噴出している多くの難問題の数々はその一部について先に長々と触れたとおりですが、スタート直後の十数年間では表面化しなかった無理な民営化のひずみがここに来て誰の目にも分かる形となって一気に襲いかかってきたという印象を感じています。
現在のような事態を招いた要因として元々ある根本的に不利な経営環境と民営化後の急激なコストカットと人員削減、相次ぐ新型車両の開発投入による都市間輸送の高速化など経営規模を越えた無理な設備投資などが上げられていますが、それらに加えて安全運行に必要不可欠な線路をはじめ重要なインフラ施設を維持するための費用と負担に対して、鉄道事業社の恩恵を預かっている地方から国全体にいたるまで日本全国の経済社会全体から十分な再配当がなされてこなかったことが上げられると思います。
手間暇と経費ばかりかかる鉄道事業よりも道路と自動車に切り換えてしまった方がてっとり早い、そうすれば負担も減りより一層便利になって一石二鳥という考え方がモーターリゼーションというフレーズが盛んに叫ばれていた時代以来一般的な地位を占めてきたようですが、こういった従来から浸透してきた当たり前と思われてきた考え方も、この先予想される急速な経済の縮小と財政の悪化によって早晩に成り立たない時代になりつつあります。
一見して道路と自動車を中心とした交通社会のほうが安上がりで便利なように思われていますが、日本全国津々浦々まで張り巡らされた、総延長では鉄道路線をはるかに超える巨大な道路網を維持するための巨額の負担の殆どは100%に近いくらい税金です。
それらの長大な道路網のうち一人一人がどれだけ利用してきたか否かに関わらず、全ての国民がこれまで何らかの形で一定の負担を背負ってきただけでなく、頼みの税収だけではその巨大過ぎる道路網すべてを維持できない時代にすでに突入しつつあります。
そういった厳しい財政縮小時代がやってくることを考慮すると、もはや税収だけで維持できる限界を超えそうな道路網をこれ以上拡張し続けるよりも、安全運行に必要な最低限の予算を投じるだけで自力経営で運行できる鉄道輸送に人の移動も物流も今のうちに最大限移行しておいたほうが先々において得策ではないか、それが結果的に国民全体の税負担軽減に繋がるという逆転の発想も成り立つのではないかと期待しています。
(※急激な高齢化により高齢者のドライバーが急速に増えていますが身体的理由や経済的な理由で自動車の運転が困難な人たちも急速に増えつつあります。また若い世代の人たちの車離れも徐々に進んでいることから、これまでの自動車中心の社会を改めて鉄道、バス、タクシー、自転車、徒歩を組み合わせた複合的な交通社会を築く時期が近づいていると思われます。つい先頃、女性の高齢者の運転する自動車が起こした事故で若者三人の命が失われるという痛ましい出来事がありました。こういった不幸な事故を未然に防ぐためにも自動車を持たずとも移動の手段が十分に確保されたうえでこれまでどおりの暮らしが成り立つ社会を目指すことが望ましいと思います。)
(※国鉄時代の負債があまりにも巨額だったためにそれ以後、社会的に公共事業における赤字体質という言葉のマイナスイメージだけが定着し一人歩きするようになりましたが、本当に必要な公共サービスを維持するための費用と経営上の不備から生じた損失や無駄な事業をしっかりと分けて考えるべきであり、それは鉄道以外のあらゆる公共事業にも当てはまることです。また公共事業において本当の意味で深刻な赤字問題と言えるのは、鉄道のようにある程度独立した収益事業として成り立っている分野よりもすべて公共予算で賄われている分野であって、それらの収支の結果は直接的に国の財政を圧迫し続けています。国の深刻な財政難の真の要因についても客観的に見直される時期に入りつつあります。)
生活道路も含めた日本中のありとあらゆる大型公共インフラを維持することがますます困難になりつつあるなか地域社会の要である地方自治体でさえも必要最小限の範囲に縮減、整理されることが検討されるようになってきました。
鉄道事業の在り方もこれまで通りとはいかず、すべてにおいて再検証が要求されることは避けようのない時代の変化ですが、先に触れたとおりだからこそ鉄道の本来持っている優位性を様々な方面から見直し、もう一度それらの利点を縮小社会の中にあっても有効に活用かされるような新たな方策が見いだされることを願ってやみません。
そのためにもより視野を広げて諸外国の鉄道事業経営における成功事例を参考にするなどして民営化当初の時代に課せられた無理な経営構造を根本的に見直していこうとする機運が日本全国の鉄道事業経営のあり方において今こそ必要になっていると感じられます。
噴出するJR北海道の問題をただ情緒的に糾弾するばかりでなく、冷静に事態の根本の根を探り出し粘り強く改善策を積み重ねることで信頼される新たな鉄道会社として完全復活を果たしてほしいと願っています。そしてJR北海道一会社を超えて北海道の鉄道事業が農業、観光をはじめ全道の様々な分野の産業や地域経済全体に与えている大きなメリットを再評価し、失ってから後悔するにはあまりにも遅すぎる貴重な社会的資源を潰えさせないために全ての立場ある人たちが連携して守り抜いてほしいと思います。
ここ最近またJR関係で不祥事が相次いでいますが、そのことについてあーだこーだと言う気はもうほとんどありませんが、少し気がついたことだけ書いておこうと思いキーを叩いています。
先日起きたスーパー北斗出火事故は未だ原因が謎のままで、密閉された空間の配線外部が焦げるという難解な事象でした。
以前千歳線を走行していたスーパーおおぞらの配電盤出火事故と同じ種類の事故ではないかと想像してしまいますが、細かな配線や電気機器に関しては素人マニア程度の知識ではお手上げですが、それでも思いつくままに書き進めたいと思います。
前回床下配線からの出火事故を起こしたキハ281系にしろ故障や事故が多発しているキハ283系もJR世代前期の車両で振り子システムや軽量ステンレス車体など国鉄世代の車両に比べて顕著に合理化された世代の車両たちです。
さらにこういったJR化以降のハイテク世代の車両を特徴づけるものに制御システムのデジタル化が上げられます。
運転台のモニターなどを見れば解りますが、国鉄以前のアナログメーターが並んだ車両の運転台に比べて格段にシンプルになり、その分の情報表示や制御方法を搭載されたコンピューターシステムに依存しています。
鉄道車両に搭載された種々の複雑な機器の制御方法をコンピューター化することで電気配線や油圧、空気配管の数を劇的に減らし、さらに信号のデジタル化によって複数の機器をより少ない配線で制御することも可能になりました。
そうすることで車両のコストを下げ、軽量化によって燃費を抑え、日常の検査部位を減らすことで車両の運用効率を上げ予備車の必要数を減らすことが可能になるなどの大きなメリットが生まれました。
ところが、こういった高性能ハイテク車両が走り始めて20年を超えて老朽化が本格化すると、そのハイテク化の恩恵が大きく裏目に出始めました。
アナログ式の制御システムでは配線や配管はより複雑で多くなりますが、それぞれの機器に対してほとんど必ず一対の配線やスイッチ、配管類が張り巡らされているので、いざ故障した時にその原因となった部位を追跡し特定できる構造になっています。
その一方でコンピューター化された制御システムでは、車両内に多数点在する機器同士をデジタル配線でチェーン化してつなぎ合わせることで配線は単純化されていますが、その先の配線は全てブラックボックス化されたコンピューターに接続されています。
そのために、もしどこかの部位に異常が発生した場合、その関連した機器と制御系どうしの原因を配線や配管を通して特定することが難しい構造になっています。
さらに、もし一箇所の機器に異常が生じた場合、数珠つなぎされたデジタル配線の特性上、他の関係のない機材までエラーが及ぶ危険性が高くなります。
以上のようなデジタル制御システムの性質上、従来からのアナログ式制御システムのように異常箇所を特定したあとで、その部位だけを修繕したり新品に交換することで完全な機能を回復をさせることも困難になります。
なので、高度なデジタル制御システムが寿命を迎えた場合、不具合を起こした部位だけでなく、システム全体を丸ごと新品に置き換える必要性が生じます。
(結果的に国鉄以前のアナログ技術に根ざした旧来の車両に比べて、JR世代の車両のほうが取替えサイクルが1/3から半分程度に短くなっています。)
そういった大胆な機材の一斉取り替えが、極度に信頼性と確実性が求められる鉄道車両において、その生命線である安全性を維持するためにより一層求められるという結論に至ります。
でもそうするためには言うまでもなく莫大なコストを負担する財力が必要になります。
株式上場企業のJR東日本はその豊富な資金力を背景に短期的なサイクルで新型車両を開発し、自社系列の車両メーカーで大量生産することで大規模で効率的な置き換え計画を実施しています。
大量に必要な首都圏の通勤電車では90年代前半の元祖ハイテク電車の209系に始まり、E231系からE233系の大量増備に至り、さらに先月には2000年代前半に投入された山手線用E231系500番台が早くも新型のE235系に置き換えられることが発表されています。
これほどまでに早い新型車両の投入サイクルが実施される背景には、超過密高頻度運転の山手線をはじめ首都圏通勤路線の安定運行を維持するためには、デジタル式車両の信頼性を完全に維持出来る浅い経年のうちに新型車両に次々と取り替えていくという方針に至ったのではないかと想像されます。
(その一方で日本第二の人口を抱える大阪市の環状線を運行しているJR西日本は車齢40年前後の国鉄型103系や201系に大幅な更新修繕を加えながら運用しつづけていることとは対照的です)
発足以来、赤字必至の路線網を維持しながら急速に高速化を推し進め、国が定めた経営安定化基金の運用益と事業の多角経営化で何とか収支のバランスを保ってきたJR北海道ですが、ここにきて線路、車両双方の深刻な老朽化が極まっています。
さらに車両面においては、これまでに述べたとおりハイテク化されたJR世代車両の想定よりも早い老朽化と、国鉄時代から今現在に至るまで第一線上で走り続けている旧来の車両の老朽置き換えの時期が重なりつつあるという事態が追い打ちをかけているようです。
鉄道車両にかぎらず、あらゆる機械製品には寿命があり、当然ですが使い続けていく内に徐々に劣化摩耗が進行し修繕が頻繁に必要になります。
その機材が新製された時にかかったコストを回収し終えた後に老朽化が見られるようになると、その修繕にかかるコストと増えた手間の分と新しい機材に取り替えるコストを天秤にかけつつ経営的な状況も加味しながら取り替えられていくことになります。
そのサイクルが一般の鉄道車両では標準で約25年程度、新幹線などより高度な安全基準が求められる場合は15年前後とより短くなります。
今後、老朽化した車両を新型車両に置き換える安全対策を進行するとありますが、アナログ式ながら長寿命の国鉄車両を置き換えた後も、デジタル化されたJR世代の短命な車両置き換えのサイクルがより早まるといった重圧も加わるようになります。
さらに北海道新幹線開業に向けて東北新幹線E5系と同等のH5系を40両新製した上でさらに2035年の札幌延伸を見据えて函館に総合車両基地も建設中です。
新幹線車両の平均寿命を考えると札幌延伸以前にこれらH5系は取替えのサイクルが訪れることになりそうです。
それまでに在来線の施設や線路網を立て直し、車両の更新サイクルの適正化を図り、安全性の完全な回復を実現した上で経営を安定化させる必要性があります。
でもそれは、昨今の現状を傍から見ている限り、とてつもなく高く乗り越えることが困難なハードルに思えてなりません。
PS.)
先のスーパー北斗床下出火事故の件ですが当該車両のキハ281-4号に昨年函館へ行った際に乗車したりしています。今回の事故は長万部手前で発生したようですが、もう少し手前で起きていたら長大な静狩トンネル通過中だったかもしれないわけで、もしそうなれば石勝線火災事故の二の舞いになっていたかもしれません。煙が上がった床下を開けてみると汚れやタンポポの綿毛まで入っていたようで、つまりは新製されてから20年以上当該部分は開けられること無く放置されていたのかもしれません。一般家庭内のコンセント周りにおけるトラッキング火災もそうですが、電気配線廻りの汚れやホコリの堆積はかなりの危険性を伴います。また本文で述べたとおり、コンピューター制御化されたハイテク車両の配線には、高周波数のパルス波形を伴うデジタル信号が縦横無尽に行き交っています。これらのデジタル信号のやりとりで制御される機器同士は、その信号に含まれる一秒間に数万回以上の高速で振動するパルス波形のタイミングを正確に読み取ることで動作しています。これらの信号が通る配線や配電盤の計器類に接触不良や劣化が生じている場合、パルス信号のタイミングに悪影響が生じて機器同士のエラーや偶発的な誤作動の原因になります。アナログの電気配線の場合は通電と絶縁がしっかりと保たれた上で、スイッチや機械式のリレーなどが正常に開閉動作すれば問題なく動作しますが、デジタル機器の場合は高周波のノイズや電波、静電気などにも敏感でより厳重なシールド対策などが必要になります。こういったデリケートなデジタル機器の配線周りで汚損や酸化、接点不良などの劣化した状態を放置すると確実に動作異常をきたし始めます。さらにはそういった劣悪な仕様状態が長引くとシステム全体の寿命を短くしてしまうことにも繋がります。ハイテク車両が主力となっている最近の大手私鉄やその他のJR各社の工場などで分解整備を受けている車両の様子を見ると、電気系統関係は徹底的に清掃が行き届き汚れた配線一つ見当たらないほどに仕上げられています。清掃を徹底するというメンテナンスの基本中の基本も合理化されたマニュアルの項目から抜け落ちることでおざなりになってしまったのでしょうか。
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誕生日:
1982/05/07
職業:
エア作家/にわか写真家
趣味:
鉄道と写真ともろもろ・・・
自己紹介:
バセドウ病罹患者(勝手に寛解中)。
発病から10年以上経ちましたがようやく沈静化へ向かいつつある今日この頃。同時に人生の在り方を模索し続け小説という創作物に結晶化することを日々の生業とする。写真撮影は豊かな創造性とニュアンスの源泉です。
写真撮影の友:PENTAX K10Dと愉快なオールドレンズたち。
コンパクトはRICOH GX-8、R10、ケータイカメラCA006
フィルムカメラはPENTAX SPF、RICOH R1s、GR1s
「目指す場所があるからいつだって頑張れる!」
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